中高年の保菌率が高いピロリ菌は、近年有名になりつつあります。では具体的にどのように感染するのかをみていきましょう。

ピロリ菌の感染経路とその感染率は?

ピロリ菌の明確な感染経路は実のところ正確にはわかっていません。しかし、少なくとも、幼児期に経口で菌を飲み込んでしまうと、感染のリスクが非常に高いことがわかっています。幼いころは免疫システムが完全にできあがっていないので感染リスクが高いですが、大人になってからは感染がみられません。有名なアメリカと日本のピロリ菌感染に関する調査があり、頻繁にキスをするアメリカより、日本のほうが感染率が高いことからもこれは明らかです。ひまわりにキスする女の子幼児に対して口移しで食事を食べさせていることが原因ではないかといわれており、こうした習慣をもろにうけてきた一定以上の中高年に感染が多いのが現状となっています。20-30代の若年層感染率が10%程度であるのに対し、40代以上では急激に割合が跳ね上がり、50-60代にいたっては80%という高値を記録しています。








トイレで感染?

ピロリ菌の感染の多くは経口感染であり、口から直接菌を摂取したためにおこるのが原因です。ところで、皆さんが毎日利用する便器ですが、糞便の微粒子を吸い込んで感染することはないのでしょうか。結論から言えば、現代においてこの可能性は限りなく低いということができます。こうした、糞便からの感染というのは確かに存在しますが、それは衛生環境が劣悪である場合です。水洗でないトイレなどの時代で、子どもが手に付着した便を口にしたり、満足に汚染物が流れない状態が常態化しているような環境での感染はリスクがありますが、あくまで発展途上国に限るでしょう。現代においては、上下水道が整備されており、こうしたリスクは限りなく低いと考えられます。しかし、使用後はしっかりと手洗いを徹底し、少しでもリスクを軽減することが大切です。

家族に1人ピロリ菌がいるとみんなに移る?

基本的にピロリ菌はせきやくしゃみ、接触では移りません。あくまで口から口への感染が基本となります。ですから、保菌者がいるからといって、感染のリスクが高いというのは早計です。しかし、免疫システムが満足に確立していない胎児や子どもへの感染リスクは上げられるでしょう。こうしたご家庭では、次世代への口移しでの食事摂取は絶対にやめましょう。また、同じ皿で食事をするといった環境も改善することで、限りなくリスクを軽減することができるでしょう。家族で食事


感染率の違い

昔と今、環境の変化からの違い

ピロリ菌の感染率を年代別でグラフにするとその時代の背景が見えてきます。

1950年では;
0歳から10歳は0〜50%、20歳からはいきなり80%に跳ね上がり、そこから60歳過ぎまではほとんど変わらず横ばいです。

現代では0歳から10歳くらいまでは10%、20から40歳くらいまでは20〜30%、そこから団塊の世代までは一気に跳ね上がり80%近くまでいきます。

感染率が高いのは産まれてから幼少期くらいまでと団塊の世代である60歳以上が感染率が高く出ますが、幼少期の頃は抵抗力が弱い為、やはり親や兄弟からの感染が多くなってしまい感染率が高く出ます。

しかし1950年よりも現代の方が感染率がかなり低く出ています。

団塊の世代の場合は歳をとったから感染しやすくなって感染したわけではなく、昔の環境の影響が大きいのです。戦後の時代は上下水道が整備されていなくその水を介してピロリ菌に感染した人が多いようです。その時代の人達が現代団塊の世代となって、その結果団塊の世代が感染率が高く出ているのです。

0歳から10歳までの感染率の差が1950年と現代とで差があるのもこの上下水道が整備されているかいないかの違いが顕著に出ている結果と言えるでしょう。つまり現代は上下水道が整備されたおかげで感染率が大幅に低下しているので昔と比べるとピロリ菌への感染にそこまで敏感になる必要はありません。

しかしまだピロリ菌の感染はゼロになった訳ではなく、感染予防や除菌などしっかりと対応していかなければならない感染症でもあるので油断せずしっかりと向き合っていきたいものですね。

国によっても危険度が違う?

国によってもつ危険度が違うというのは前項でも説明した上下水道が整備されているかいないかの差が大きいです。

発展途上国やその国の都市では水道水が必ずしも安全なものではない為、ピロリ菌のみならず様々な感染症につながる危険があり、そういう意味で感染率が違ってきます。発展途上国の場合、感染者の糞便や吐物から菌が井戸水や川、湖などに含まれてそれを介して感染につながる事が非常に多く、感染予防にはまだまだ課題があります。それに上下水道の整備もそういった発展途上国や未発展国では難しい問題ですので現代においてもなかなか解決し切れない問題の一つとなっています。

海外に旅行に出かける際にはピロリ菌以外にも感染症の情報などしっかり下調べをし感染予防に努めなければなりません。