世間でよく取り上げられるピロリ菌。感染すると胃や腸に炎症を起こすことで有名です。では具体的にどういった疾患を引き起こすのでしょうか。

逆流性食道炎とピロリ菌

ピロリ菌を原因とした疾患として、逆流性食道炎が知られています。通常ピロリ菌が感染すると主に胃の粘膜ひだのなかで菌が増殖し、慢性的な炎症を発症します。胃の出口である幽門から胃の入り口である噴門に向かって炎症が進むのが一般的で、次第にその範囲を広げていきます。では炎症が激しく、胃の入り口を超えてしまったらどうなるのでしょうか。答えは、胃を超えて食道まで炎症が進行していきます。ここで、ピロリ菌に感染すると組織を守ろうと胃酸が過剰に分泌される特徴があり、増加した胃酸が食道の逆流防止機能を壊して食道にまで炎症が達してしまったケースが逆流性食道炎といえるでしょう。首に手を当てる女性

どういった症状か

逆流性食道炎は、胃から逆流した胃酸が食道に炎症を引き起こしている状態です。食道にも当然神経が通っていますから、炎症を起こすと食道が通っている胸や上腹部が激しく痛みます。また、胃酸が逆流してくるために、げっぷや呑酸とよばれる胃酸が口元まで上がってきてすっぱい味がしたり、吐き気を催したりする症状が出現します。胃酸が上がってくるということは、その途中にあるのどや口腔内もダメージをうけます。声がかすれたり、せきや痰の増加、そして口腔内の悪臭やただれといった症状が有名です。










ピロリ菌から胃がんになる可能性は?

胃の検査
胃や食道におけるがんで最も多いのが腺がんという種類のがんであり、露出している粘膜組織から派生したがんのことです。ピロリ菌が感染すると、胃の中に慢性的な炎症を引き起こします。この際、一番表層である粘膜層の萎縮をひきおこすのです。この状態が胃がんを発生させる好条件を作り出しているといわれています。1994年にWHOがピロリ菌は発がん因子のひとつであると提唱したことからも、権威ある学術的な結果を基にした知見であるため、きわめて信頼性が高いといえます。10年間の追跡調査では、ピロリ菌非感染者で胃がんの発生が見られなかった一方で、ピロリ菌感染者の2.6%に胃がんの発生がみられました。



まとめ
逆流性食道炎だけでなく、胃がんも併発してしまうのはとても怖いですね。今は医療機関で簡単に除菌ができますから、積極的に治療を行っていきましょう。保険も利くようになり、ますます利用しやすくなっています。